北緯14度
絲山秋子著の『北緯14度』は、『絲的サバイバル』にセネガルでの一人キャンプの記述があり読んでみたいと思っていた。
やっぱり私は食べることが好きということと、食べ物を美味しそうに書いている本が好きだ。
ホテルの一階には生垣に囲まれた明るいカフェがある。決して安くはないけれど、バナバナが入ってこないので静かに時間を潰すことができる。大きなカップにカフェクレームを毎朝飲むことに決めた。
バナバナとは物売りの人たちのこと。
本を読むときに、時間を気にせず落ち着いて読めるお店を常に探しているので、こういうホテルで静かに過ごせるのが羨ましい。
残念ながら私の住んでいる近所には、静かに本を読めるお店がないのだ。
ソレイマンの案内で、駅前の屋台のサンドウィッチを食べる。羊の挽肉とタマネギを炒め煮にしたものが鍋に大盛になっていて、スパイシーないい匂いが漂っている。ぱりぱりのバゲットに、羊の煮込みとレタス、トマト、ゆで卵などを一緒に挟んでカーニという名前の辛いピーマンのピュレをのっけて新聞紙で きりりと巻いて出してくれる。カーニがびっくりするほど辛いけどうまいし、中身が味も濃い。量も十分だ。しかも安い。400シェーファー。およそ100円。
現地のサンドウィッチってどんな味なんだろう?と想像しながら読むのは楽しい。
それから、現地の人たちとの交流の中で、絲山さんが気付いたことで印象に残った部分。
もちろんノンと言うのは、ツーリストにとって必要なことではあるのだが、それにしてもむきだしの警戒心を私も振り回していたことに気がつく。(中略)
「ありがとう」
と、私は親指を立てる。
彼らは納得する。それでしつこくする商人はいない。こちらこそ、と親指を立てて、去っていく。
ここに一生住むというコーディネーターのお姉さんは大好きなのですが、他の邦人の閉じた世界にはうんざりしています。なにしろ、殆どの大使館員はセネガルを見ようとも思っていないし、立場も違うのですから何も得るものがありません。危険だとか汚いとかそんな話ばかりで気が滅入ります。
数時間でさらりと読める本だけれど、好きな文章、はっとするところがごろごろあって、読んでよかった。